優秀なエンジニアの定義について考える – 其の伍 – 低待遇など言語道断?

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「優秀なエンジニア」というキーワードでGoogle検索した際の上位30の記事をレビューするシリーズ4回目です。
初回はこちら「優秀なエンジニアの定義について考える – 其の弐 – 10の共通点?」ですので、ご興味のある方は始めからどうぞ。

優秀なエンジニアの定義について考える – 其の弐 – 10の共通点?

さて、1位2位3位とベスト3の記事はどれもサービスのマーケティング戦略のための記事であり、特にゲンナリする記事がワンツーフィニッシュを飾るという状況でしたが、今回の、4位の記事は、これまでのシリーズ史上最高の(すごい狭い範囲ですが)期待を持たせるタイトルになっています。

ベスト3の記事は全てオウンドメディアといえると思いますが、4位の記事、「なぜ優秀なエンジニアを低待遇で採用してはいけないか」はmediumというTwitterやBloggerの生みの親であるEvan Williams氏とBiz Stone氏が手がけているサービスに投稿されたものです。
mediumはエンジニア界隈というよりも、個人的にはスタートアップ界隈であったり、投資家であったり、イノベーションというキーワードが好きなイノベーターやアーリーアダプターの方々が、なかなかな記事を書いている場所、アメーバブログの100倍シャレオツなサービスという個人的な印象です(本当に個人的な。たぶん、たまたま目にする記事がそういうものが多いから)。

そして、毎回、著者情報に注目しているわけですが、ここにきてようやく著者個人が明確である記事をご紹介できることとなりました。
mediumでは、英文字表記でフルネームが登録されていますが、ここでは個人名の紹介は見送ります。
また、氏の他のエントリーやその他のネットに広がる情報を見ますと、バリバリのエンジニアさんであることがわかります。
私みたいな似非エンジニアが氏の文章を評するなど、若干気後れがしますが、これまでと同様にラフに好き勝手にレビューしたいと思います。

経営者向けに、優秀なエンジニアを説明した記事です

この記事の冒頭で、早速対象が語られていてるのですが、経営者向けということです。
またのっけから募集要項では具体的な待遇を提示することとされています。
あー、もう、いいですね。あ、良いということです。
具体的な待遇、特に給与が書いていない募集って、「百害あって一利なし」ぐらいの勢いだと思いますね。
(しばしば日本語がおかしいけど、気にしない)

私は転職を何度も繰り返した後に、独立(起業)に至っていますが、特に年収が「応相談」といった記載がある企業はまず転職候補から外しました。
だって、怪しいもの。
自分が特別に優秀だとは思いませんが、少なくとも私より優秀なエンジニアだったら、懐疑的とは言わなくても、しっかりと情報を分析するでしょうし、洞察力もありますし、年収が「応相談」などと書かれている時点で、「何かしら公にできない理由があるんだろうな。それはもちろんネガティブなものだろう」と推測ぐらいするだろうと思うのですね。

優秀なエンジニアはバカじゃない、というより、体力と気合だけみたいな中小企業の経営者よりもよっぽど秀でている人も多いのですから、辻褄の合わないことや不明瞭な情報公開をしている企業などは相手にしないと考えたほうがいいと思うのですよね。
それに、募集要項ではいいことがすごく書いてあって、実際に働いてみたら、現場はひどくてギャップがあるなんていう企業も多いと思いますが、会社に対する帰属意識などは失望とともに一気に削がれるものだろうと思います。

優秀なエンジニアを獲得するために

氏が主張されているのはシンプルで、「社内の優秀なエンジニアの待遇をあげること」「募集要項に
具体的な待遇について提示すること」の2つです。
詳しくは、氏の記事を読んでいただければ良いのではないでしょうか。

ここで、私が記事を評価したいのが、非常に優れた引用です。
具体的には、「プログラマーには、コーディングの生産性で10倍、コードレビューの速度では6倍もの能力差があるという」という記事と、中国の「まず隗より始めよ」という言葉を引用しながら、主張を展開されています。

どちらも非常に説得力の高い内容です。
前者はプログラミングコンテストの実際のデータを分析したエンピリカルな結論といえるでしょうし、後者は実際の史実で証明されている事柄です。
後者は特に、「優秀なエンジニアを採用するには、まず社内の優秀なエンジニアの給与をあげよ」という説に対して非常に説得力を増大させる効果を発揮できているのではないでしょうか。

個人的にも、近年、お世話になるクライアントとは、ある程度の信頼が築けた時点から、ガツガツと単価アップの交渉をするのですが、それは、エンジニアに対する評価といものを社内的に見直すきっかけをクライアントに提供し、そのクライアントの中のリテラシー向上に寄与し、より優秀な人材を採用する土壌づくり、と同時にクライアントのエンジニアの評価(つまり給与ですが)を上げ、離職を防ぐことに貢献できないかを模索してきたという経緯があり、非常にズドン、バキュン!ガーン、と腹落ちしたエピソードでした。

この中国の「まず隗より始めよ」という逸話についてはですね、社内エンジニアが待遇改善を経営者に求める際に有効な例え話になろうかと思うので、ぜひ、対象記事を読んでいただければと思います。

また、この「まず隗より始めよ」の大切さを思い知らされるような、現実に起こった事例として、2015年9月1日づけはてなブログの「ドワンゴは大量退職に関する印象操作をやめろ」を挙げたいと思います。
この記事に、給与に関する、新入社員と既存社内エンジニアの給与逆転による不満などが書かれていて、まさに、という印象です。

結局優秀なエンジニアが評価される世の中ではないから、このような記事が生まれるのだろうか

これまで評してきたとおり、「なぜ優秀なエンジニアを低待遇で採用してはいけないか」は良記事と思うのですが、一方で、こうした主張を「書きたくなってしまうキャリアのあるエンジニア」が存在すること、また、「そうなんだよねーと同意するだろうエンジニアが多数いるだろうと想定される」ことが、非常に残念な状況であるなと考えています。

例えばですね、仮に新卒の新入社員と優秀なエンジニアで、生産性の差が10倍あるなら、給与も10倍が当然じゃないかと私は考えたりするのですね。
たとえば、新卒のエンジニアがどれだけかわかりませんが、小規模事業者に就職した新卒エンジニアが300万円だっとしたら、優秀なエンジニアは年収3,000万円であればいいと思うのですね。

実際、米国では、日本よりもエンジニアの平均年収が300〜400万円も高いなどという記事を目にしたこともあります(実際のところは知りませんが)。

もちろん、日本でも年収1,000万円を超えるエンジニアは多数いらっしゃるでしょうし、業務委託の界隈でも、月額報酬が月の稼働180時間で140万円以上なんていう案件もわりと珍しくなく流れてきますので、高所得のエンジニアも一定数居ると思います。

しかし、市井の、特に中小企業であったり、それなりの規模になってきたベンチャーでも、まだまだエンジニアの給与が低い、、というか、その他の職種と大差が無い企業も多いと思います。

まず、この現状は残念だなと思います。
少なくともテック企業であれば、エンジニアこそエンジン、資産なので、そこに対しては、他の職種とは異なる給与体系になっていても全く問題が無いだろうと思います。
また、プロ契約みたいな形もあってよいでしょうし、つまり、サッカーや野球選手のように、それぞれ年俸があり、球団職員やスタッフとは報酬体系が異なるみたいなことがですね、Webサービスを事業の主とする企業ではあってもよいのではないかと考えたりもするのです。

そうした世界に来ればですね、エンジニアが小学生の憧れの職業になったりするかもしれませんし、優秀なエンジニアに対する社会の認識が正され、より一層の技術革新であったり日本国内の産業発展に寄与するのではないかと考えたりもします。

なんかね、すっごくいいスタートアップとかでね、webサービスがメインで収益を上げて、それを作り出したエンジニアたちと、経営者との資産格差が激しいなんて、そんな世界観では、良いエンジニア、良いサービスなんて生まれやしないんじゃないかって思ったりするのですよね。

優秀なエンジニアを評価しない企業や経営者など消えてなくなればいいという考え

優秀なエンジニアを低待遇してはいけないといった主張を「書きたくなってしまうキャリアのあるエンジニア」が存在することが残念と思う一方で、いやいや、これでいいのかもと思う自分もいたりします。

エンジニアに限らず優秀な人材を獲得するにはそれだけ、企業側に準備や理解が必要だと考えています。
そうしたことが出来ない企業は早々に淘汰されて、勉強不足の経営者は早々に破綻してしまったほうがよほど社会のためにはいいのではないかと考えるのです。

「なぜ優秀なエンジニアを低待遇で採用してはいけないか」の読後レビューまとめ

非常に、簡潔で、主張するポイントが鮮明、まとまりの良い文章ではないかと思います。
新たに得られる知識というものもありますし、ボリュームが多いわけではありませんが、経営者にもエンジニアにもおすすめできる内容の記事ではないかと考えました。

一点だけ、指摘したいのは、書籍「ピープルウェア」で紹介された、「優れたエンジニアは10倍〜」というのは、「普通のエンジニアの10倍」ではなく、「最低の成績のプログラマの10倍」ということです。
また、作業を早くすれば「優秀なエンジニア」だ、とは個人的に定義したくはないのですが、氏が書かれた意図である、「経営者向けの記事」としては、わかりやすく、この視点で話を進めてもいいのかなとは思いました。
たとえば、私が書いた、「優秀なエンジニア」とは何かでは情報量が多すぎるので、経営者向けではないのかなとは思いました。

ただ、上述もしていますが、こうした記事が上位に来てしまうという事象、たくさんの方に読まれただろうから上位に来ているという事実が、氏が求める理想的な状態から現実は程遠いのだろうと思います。
似非エンジニアではありますが、エンジニアにとって、働きやすく、暮らしやすい世界になってもらいたいものです。

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