優秀なエンジニアの定義について考える – 其の六 – キャリアは掛け算?

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Googleで「優秀なエンジニア」と検索して上位30の記事を批評しながら優秀なエンジニアとは何か、優秀な人材とは何かについて想いを馳せるシリーズ第5回です。
この記事の始まりが気になる方ははこちら、初回の記事をご覧ください。

それでは、今回もラフに、手前勝手な論理と憶測と四方山話を交えながら評してまいります。

スタートアップの経営者が語る優秀なエンジニア論

これまではオウンドメディアの著書不明記事が3つ、mediumの記事が1つということでしたが、
今度はインタビュー形式による「優秀なエンジニア」論ということで初めての形式になります。
インタビューされているのはnanapiというハウツーサイトを構築した起業家の「けんすう氏」です。
私自身はnanapiというサービスを利用したことが殆どないのですが、「けんすう氏」のFacebookのコメントなどは、共通の知り合いが居るので、タイムラインを上がってきたりして、以前よりお名前だけは見聞きしたことがあります。

nanapiというサービスが成功して成長を続け、KDDIグループから資金調達したり?、株式会社会社nanapiを畳んでEXITしたらしい?などという概要程度は知っていますが、正直nanapiというサイトを日常生活で利用する機会が無いので、その価値については理解ゼロということになります。

目に見えない、意識されないというのは、世界を自らの意識を通して把握する人間からすると、存在していないのと同義になります。
そうした意味では、nanapiというのは私の世界に存在しておらず、けんすう氏についても、facebookのコメントをチラ見したぐらいで、ほとんど存在していないかのような人物だったと言えます。
あ、もちろん、けんすう氏にしてみれば、私などは認知されているわけもないので、81年世代を代表すると言われる起業家にとって、私など存在していないわけです。

ここで、少し脱線しますが、こうして、社会が成り立っているから、空爆とか起きちゃうんだと、思ったり思わなかったりします。
お互いに距離が遠くても、接点が存在しなくても、まして、あの人なんなんだろうねーなどと思っていたりしても、お互いを人として尊重しあうということが大切なわけで、そんな想像力が欠如していくと、空爆だの戦争だのとなるんだろうなと。
いや、まぁ家族が惨殺されたりとかしたら、もう正気を失うとか、そういう自分を想像できなくもないし、軽々しく戦争反対を叫ぶこともできないのですが。

しかし、そこに人が居るとわかっていて、爆弾を投下するってそんなな簡単にできないですよね。
存在を、否定し、無き者にしているんじゃないかと思いますが、まぁこの話はここら辺にして。

エンジニアに限らずキャリアは掛け算

いつもの如く、前置きが長かったのですが、結論を申し上げますと、良記事だと思います。
というわけで良記事なのでリンクを貼りたいと思います。
「優秀なエンジニアの定義とは?」ー nanapi けんすうに訊く![1]

まずは、その構成、インタビューのポイント、主張など、さすがエン・ジャパンのメディア、読むに値する品質のある記事を作られているのではないでしょうか。
これまで見て来た4位までの記事とは違い、メディアの書き手の主義主張というものを見せず、よって記事の内容に余計なバイアスを感じませんし、スタートアップの起業家が考える優秀なエンジニアという定義をストレートに、想定読者である求職しているエンジニアに届けようとする姿勢を感じます。

近年はオウンドメディアが溢れ、送り手からの恣意的なメッセージが込められた文章が、まるでそこに隠された意図が無いかのように書かれた記事が溢れ返っています。
そうしたインターネットの世界の中で、メディアの中立性というものを感じさせてくれます。
あ、個人的な印象ですけど。

変化に対応、スキルは掛け算、遅延評価勉強法、チャレンジの数、さて何が優秀なエンジニアにとって重要?

いつものとおり前置きが長くなりましたが、内容についてはたくさんの印象的な言葉が並んでいて、どれを紹介しようか悩むほどボリュームがあります。
ただ、どれも頷ける内容でおおよそ同意する考えなのですが、けんすう氏が経営者であり、エンジニア出身と謡っているわけではないので、実際のエンジニアには響かないことも多いのかもしれないということを記事を読みながら考えていました。

というのは、経営者ですから当然なのですが、人材に関する最終的な判断軸、評価軸がビジネス上の成果に依っています。
それは本文中の小見出し『エンジニアである前に、ビジネスパーソンであれ。』にも表れています。

私も似非ながらエンジニアでお金を稼ぐことをしておりますが、技術が好きです。
新しい技術を習得することが楽しいですし、そうした気持ちを持って技術者を続けている方も多いと思うのですが、そうしたエンジニア層に、ビジネスを意識せよという言葉が簡単に響くのであろうかとも思いました。

エンジニアが考える優秀なエンジニアとは何かを考えさせられる

繰り返しになりますが、けんすう氏は経営者ですから、ビジネスパーソンであることを記事中に一貫して主張されているように思います。
しかし、それだけが「優秀なエンジニア」だろうかと、考えさせられました。

最近思い始めたのですが、世の中には3種類のエンジニアが居るのではないかと思います。

  1. 技術を創るエンジニア
  2. 技術を使うエンジニア
  3. 技術に使われるエンジニア

それぞれを簡単に説明すると、技術を創るエンジニアとは、技術革新を生んだり、プログラミング言語生み出したり、OSSのコミッターであったり、プログラミング言語のフレームワークを開発するような人物像です。
次に、技術を使うエンジニアとは、自らでは技術革新を生んだり、言語を創造したりはせず、前述の創造的エンジニアが用意した技術のインフラを利用して、何かしらのプロダクトを開発するエンジニアです。一般的に企業の中で働くエンジニアということでしょうか。
最後に、技術に使われるエンジニアとは、技術的なインフラを利用しているかのように見えるものの、それら技術のインフラについての理解が不足していたりして、使いこなせていないエンジニアです。

さて、ここで、けんすう氏が示す「優秀なエンジニア」像というのは、「技術を使うエンジニア」の中で、ビジネスパーソンであること、事業の成長を意識しているエンジニアのことではないかと考えます。
つまり、それは企業が求める「優秀なエンジニア」ということです。

一方で、社会が求める「優秀なエンジニア」とは、かならずしも、「技術を使うエンジニア」だけではないと考えます。
技術を使うエンジニアがその力を発揮できるのは、先人たちが様々な言語やフレームワークを想像してくれたり、新たな技術革新を生んでくれたからだと思います。
創造的エンジニアが存在してくれるからこそ、私のような技術を使うエンジニアがソフトウェア開発ができるわけですし、やはり無償で提供されるOSSの存在というものには日々感謝をしています。
いくら、技術を使うことに優れたエンジニアが居たとしても、彼ら創造的なエンジニアが居てくれなければ、社会の発展はなかったでしょうし、畏敬の念を込めながら、技術を創るエンジニアも優れたエンジニアであるということを主張してみたいと思います。

エンジニアと成果主義について考える

組織論の書籍などを読みますと、日本は成果主義を誤って解釈して導入してしまったという文脈の文章を目にすることがあります。
それは成果主義とは、本来は結果とプロセスを評価するものであるのに、日本ではプロセスの評価をおざなりにして結果だけを評価する結果主義となっているものです。

この文脈について話すことが本投稿の趣旨ではないので、成果主義と結果主義の違いについては深掘りしませんが、事業の成長にあたって、成果は重要視されますが、一方で成果と評価されないけれど重要視されるべきものに維持という概念があります。
これもまた深掘りしませんが、ソフトウェアでいえば、プロダクト開発にたいして、保守・運用という仕事があるのですが、これもまた非常に重要な仕事であり、優れたエンジニアという評価軸の中になにかしら付加するべき評価軸ではないかという気がしています。

これはうまく言語化することがまだできていないのですが、成長を求めすぎる経営者、また長年システム運用を経験していない経営者はシステムの維持運用に関するコストを侮っていると個人としては感じています。
いろいろな企業でシステム開発のお仕事をさせてもらいましたが、長年運用保守される中で、事業成長を、成果を求める力が強いがゆえにメンテナンシビリティを著しく失い、運用保守コストが高くなり、新たな機能開発に無用な時間がかかったり、不具合が多発するといったシステムを多く見かけます。
つくったらつくりっぱなしというシステムが数多くあります。
そういったことに、つまり長い時間軸で、つまりサービスのLTVであったり、全体最適を考慮できる能力、技術もけんすう氏の語る優秀なエンジニア像には含まれていないように思われました。

けんすう氏の語る優秀なエンジニア像についての記事に関する評価まとめ

繰り返しになりますが、非常に興味深く、どのエンジニアも経営者も読む価値のある記事だと思います。
一方で、けんすう氏が語る「優秀なエンジニア」像”だけが”、優れたエンジニアと言い切るのは難しいとも思いました。
それはけんすう氏があくまでスタートアップの経営者としての視点で話されているのであって、社会全体の要求を考えた場合には、また別の「優秀なエンジニア」像があるのではないかと上述してきました。
とはいえ、けんすう氏の主張には同意ですし、私の評価としては「優秀なエンジニア」としての最低限の条件を話されていると考えました。

今回は以上です。
それでは、また次の記事に移りたいと思います。

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